これは遠い遠い世界の……暑い暑い中央アジア付近で暮らす、ふたりの少女の……短い短いお話。
自然豊かな土地でスクスクと健康に育った彼女たちですが、残念なことに体型だけはお子様のまま。
ですが、そんなふたりにも『もらい手』の話がチラホラ囁かれる時期がやってきたのです。
「……ほえー。なにもしないって最高だよねー」
川の浅瀬で寝そべり、青く透き通った空を見上げるノンノン。
「退屈や! なんでウチだけお留守番なんや?」
中庭の桟敷で、木漏れ日を避けてゴロゴロと寝転ぶヌンヌン。
ふたりは、お互いのことを考えます。
ヌンヌンの家族が街へ行ったのは、刺繍に使う色糸を買うため。
ふたりが懸命になって縫い上げなければならない刺繍は、自らの嫁入り道具に施すモノ。
これが完成して初めて、少女たちは『大人の女性』として認められるのです。
「うーん、このままがいいな。このまま、ずーっと……」
「あー、心配やー。心配やけど、なんだか……こう……」
心地良い川の水に身を委ねたまま、ゆっくりまぶたを閉いてしまうノンノン。
花やヤマブドウの匂いを嗅ぎつつ、いつしか夢の扉を開いてしまうヌンヌン。
……こんなふたりでも、無事に嫁げる日はやってくるのでしょうか?